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「ふうむ」
と、房一が声をかけた。
「さやうで御座りますか。お忙しいところを御苦労さまで」
今の家は比較的街に近くて、この上もなく閑静だ。私の書斎の下は音無川で、一方は水田であり、自分の家の物音以外は殆ど音というものがない。その上、温泉もあるというから、非常にぬるい温泉だと仲介者も差配も家主も念には念を入れてダメを押したのを承知の上で越してきた。
「あら、お帰んなさい。随分早かつたのね。もう済んだんですか」
「訴訟があるさうで、面倒なことですな」
「やあ。――こちらへ」
「玄関の手入れをどうしようかと云ふのですよ」
小谷はしばらく放つていた糸を手許にひきよせて、水の中の鮎を眺めながら云つた。
「うむ、何かあ」
「獲とれましたか」
「何しに来た!」